- 「100万円」の正体は国外送金等調書の基準であること。出すのは金融機関で、あなたが出す書類ではないこと
- 対象は国外への送金だけでなく「国外からの送金等の受領」も含むこと。しきい値は政令で「百万円」と定められ、期限は為替取引を行った日の属する月の翌月末日、提出先は所轄税務署長であること
- あなた自身が金融機関に出すのは告知書で、こちらには金額による免除基準が無いこと(免除は金額ではなく本人口座かどうかで決まる)
- そして肝心なこと——100万円は申告義務の基準ではないこと。給与所得者なら給与以外の所得が20万円を超えるかどうかで判断すること(国税庁 No.1900/No.1906)
この記事の要点:よくある質問
- Q: 海外から100万円を超えて受け取ると、税務署に伝わるというのは本当ですか?
- A: 「伝わる仕組みがある」という部分は本当です。国外送金等調書法第4条第1項は、金融機関に対し、顧客が営業所等を通じてする国外送金等のうち「その金額が政令で定める金額以下のものを除く」ものについて調書の提出を義務づけています。その政令で定める金額は施行令第8条第1項で「百万円」とされています。ただし提出するのは金融機関であって、あなたではありません。また、これは申告が必要かどうかの基準とはまったく別のものです。個別の判断は所轄の税務署または税理士にご確認ください。
- Q: では、100万円以下なら確定申告はしなくていいのですか?
- A: 成り立ちません。100万円は調書の基準であって、申告義務の基準ではないからです。国税庁 No.1900 は、確定申告が必要な給与所得者として「給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人」を挙げています。金額の桁が1つ違います。ご自身の状況にどう当てはまるかは、所轄の税務署または税理士にご確認ください。
この記事は、海外の事業者からアフィリエイト報酬を受け取っている方に向けて、制度の仕組みを一次情報から整理した情報提供・教育目的のコンテンツです。税務相談ではありません。あなたの申告が必要かどうか、どの所得区分になるか、いくらで記録するかといった個別の判断は、所轄の税務署または税理士にご確認ください。引用した条文・記載は執筆時点(2026年9月)で e-Gov 法令検索および国税庁のページで確認したものですが、法令も通達もその運用も変わります。
「100万円を超えると伝わる」——この話の出どころ
海外の事業者から報酬を受け取っていると、どこかの時点で必ずこの話を聞きます。海外から100万円を超えて受け取ると、税務署に伝わるらしい。出どころが書かれていないことが多く、聞いたほうは「では100万円までなら何も起きないのか」と考えます。そこから話がおかしくなります。
結論から書くと、この噂は半分だけ本当です。100万円という数字は実在します。法令に根拠もあります。ただしそれは、あなたが何かを提出する基準でもなければ、申告が必要かどうかを決める基準でもありません。
この記事では、その2つを分けて整理します。混ざったままだと、「100万円以下だから大丈夫」という、法令上どこにも根拠のない安心にたどり着いてしまうからです。読み終えたときに手元に残るのは、自分が何を確認すればいいかという順番です。
100万円の正体は「国外送金等調書」。出すのは金融機関
根拠となる法律は、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(通称・国外送金等調書法)です。その第4条第1項に、こう書かれています。
「金融機関は、その顧客(公共法人等を除く。以下この項において同じ。)が当該金融機関の営業所等を通じてする国外送金等(その金額が政令で定める金額以下のものを除く。)に係る為替取引を行ったときは、その国外送金等ごとに……記載した調書(以下「国外送金等調書」という。)を、その為替取引を行った日として財務省令で定める日の属する月の翌月末日までに、当該為替取引に係る金融機関の営業所等の所在地の所轄税務署長に提出しなければならない。」
読みどころは4つあります。ひとつずつ確認します。
| 確認する点 | 条文が定めていること |
|---|---|
| 誰が出すか | 金融機関。顧客本人ではない |
| 何が対象か | 顧客が営業所等を通じてする国外送金等に係る為替取引 |
| いつまでに | 為替取引を行った日として財務省令で定める日の属する月の翌月末日まで |
| どこへ | 当該為替取引に係る金融機関の営業所等の所在地の所轄税務署長 |
ここで重要なのが「国外送金等」という言葉です。送金だけの話に見えますが、同じ法律の第2条と第3条第1項が、この語を「国外送金又は国外からの送金等の受領」と定義しています。第2条第5号は「国外からの送金等の受領」を「金融機関が行う為替取引によってされる国外から国内へ向けた支払の受領」等と定めています。
「国外送金等」は出ていくお金だけを指す言葉ではありません。海外から日本に向けて送られてきたお金を受け取ることも含みます。海外の事業者からアフィリエイト報酬を受け取る行為は、この「国外からの送金等の受領」に当たり得ます。
実際、第4条第1項第2号は、受領の場合に調書へ記載する事項として「その国外からの送金等の受領をした顧客の氏名又は名称、当該顧客の住所……その国外からの送金等の受領をした金額その他の財務省令で定める事項」を挙げています。
では100万円はどこから出てくるのか。第4条第1項の「政令で定める金額」がそれです。施行令の第8条第1項に、こうあります。
条文は「その金額が政令で定める金額以下のものを除く」という書き方です。つまり調書の対象になるのは100万円を超える国外送金等ということになります。国税庁の手続案内「F4-1 国外送金等調書(同合計表)」も、手続対象者を「金融機関」、提出時期を「為替取引を行った日の翌月末」、提出先を「納税地等を所轄する税務署長」と案内しています。
なお、国税庁のこの手続案内のページには金額の記載がありません。100万円という数字の根拠は施行令第8条第1項です。数字だけが独り歩きしやすいのは、このあたりが理由かもしれません。
あなたが出すものは別にある——「告知書」
ここまでは金融機関の話でした。一方で、本人が出す書類も同じ法律に定められています。第3条の告知書です。
「国外送金又は国外からの送金等の受領をする者(……公共法人等……を除く。)は、その国外送金又は国外からの送金等の受領(以下「国外送金等」という。)がそれぞれ特定送金又は特定受領に該当する場合を除き、……記載した告知書を、その国外送金等をする際、……金融機関の営業所等……の長に対し……提出しなければならない。」
記載事項(受領の場合・第2号):「その者の氏名又は名称、住所及び個人番号又は法人番号その他の財務省令で定める事項」。送金の場合(第1号)はこれに加えて「当該国外送金の原因となる取引又は行為の内容(……「送金原因」……)」。
調書と並べると、性格がまったく違うことが分かります。
| 国外送金等調書(第4条) | 告知書(第3条) | |
|---|---|---|
| 出す人 | 金融機関 | 本人 |
| 出す先 | 所轄税務署長 | 金融機関の営業所等の長 |
| 金額による免除 | 100万円以下は対象外(施行令8条1項) | 金額による免除の定めは無い |
| 免除されるのは | 金額が100万円以下のとき | 特定送金・特定受領に当たるとき |
| 主な記載事項 | 氏名・住所・金額 等 | 氏名・住所・個人番号(マイナンバー)・送金原因 等 |
告知書には、調書のような金額の免除基準がありません。「100万円以下だから何も出さなくていい」という理解が成り立たないのは、まずこの一点からです。
ただし告知書にも提出が不要になる場合があります。金額ではなく、受け取り方で決まります。第3条第2項は「特定受領」を「その国外からの送金等の受領をする者の本人口座においてされる国外からの送金等の受領その他これに準ずる……として政令で定めるもの」と定義しています。本人口座、つまり本人確認が済んだ自分名義の口座で受け取る場合がこれに当たり得ます。
実際に告知書の提出を求められるかどうか、どの様式でいつ出すかは、利用している金融機関の運用によります。海外からの入金があった際に金融機関から連絡が来て、送金の理由や取引の内容を尋ねられることがあります。これは調書・告知書の制度と無関係ではありません。自分のケースで何を出すべきかは、取引のある金融機関、および所轄の税務署または税理士にご確認ください。
口座の情報については、別の枠組みがある(CRS)
「伝わる仕組み」の話をするとき、もうひとつ出てくるのがCRS(共通報告基準)です。こちらは送金の話ではなく、金融口座の情報の話です。
国税庁の「CRSコーナー」には、この基準の仕組みが次のように説明されています。
「この基準に基づき、各国の税務当局は、自国に所在する金融機関等から非居住者が保有する金融口座情報の報告を受け、租税条約等の情報交換規定に基づき、その非居住者の居住地国の税務当局に対しその情報を提供します。」
書かれているのは、このような一般的な枠組みです。各国の税務当局が、自国の金融機関から「非居住者」の口座情報の報告を受け、その人の居住地国の税務当局へ渡す。日本に住んでいる人が海外に持つ口座は、その国から見れば非居住者の口座に当たります。ここから、一般則としてはそうした情報が日本側へ渡る経路が存在する、という整理になります。
上の段落は、公表されている一般的な仕組みから導いた整理です。「あなたの海外口座の情報が必ず国税庁に届く」と断定できる記述を、国税庁のページで確認したわけではありません。対象となる口座・金融機関の範囲、相手国が報告制度に参加しているかどうか、報告の時期など、実際の適用は個別の事情で変わります。自分のケースがどうなるかは、所轄の税務署または税理士にご確認ください。
そして、ここでも押さえておきたいのは同じことです。情報が届くかどうかと、申告が必要かどうかは、別の話です。届かなければ申告しなくていい、という関係にはなっていません。次の章が、この記事でいちばん伝えたい部分です。
肝心なこと——100万円は、申告義務の基準ではない
ここまで見てきた100万円は、すべて調書の話でした。誰が、いつまでに、どこへ書類を出すかという話です。申告が必要かどうかは、まったく別の法令が、まったく別の基準で決めています。
国税庁 No.2020「確定申告」は、確定申告を「毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額とそれに対する所得税等の額を計算して確定させる手続」と説明しています。ここに送金額という要素は出てきません。出てくるのは所得の金額です。
給与をもらいながら副業で報酬を受け取っている方が見るべきなのは、No.1900 と No.1906 です。
確定申告が必要な人として挙げられているものの一つ:「給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人」
「年末調整が済んでいる給与所得者であっても、その給与所得以外に副収入等によって20万円を超える所得を得ている場合には、確定申告をすれば税金が還付される人を除いて、確定申告が必要となります」
並べると、桁が1つ違うことが分かります。
| 100万円 | 20万円 | |
|---|---|---|
| 何の基準か | 金融機関が調書を出すかどうか | 給与所得者に確定申告が必要かどうか |
| 根拠 | 国外送金等調書法4条1項・施行令8条1項 | 国税庁 No.1900/No.1906 |
| 測っている対象 | 1回の国外送金等の金額 | 給与以外の所得の金額 |
| 動く人 | 金融機関 | あなた |
ここが、この記事でいちばん書きたかったところです。「100万円以下だから申告しなくていい」は成り立ちません。2つの基準は測っているものが違います。片方は金融機関が書類を出す線、もう片方はあなたが申告する線です。
また、20万円は「収入」ではなく「所得」で見る点にも注意が必要です。所得の区分については、国税庁 No.1500「雑所得」が雑所得を「利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得」と定義しています。あなたの報酬がどの区分に当たるか、経費としてどこまで差し引けるかは、取引の実態によって変わります。この判断は所轄の税務署または税理士にご確認ください。
所得税の申告とは別に、住民税の取り扱いについて気にされる方もいます。こちらは制度も窓口も別です。関連する記事として 副業の住民税「普通徴収」の基礎 を用意していますが、ご自身にどう当てはまるかはお住まいの自治体および税理士にご確認ください。
外貨で受け取ったとき、いくらで記録するか
報酬がドルなどの外貨で入ってきた場合、日本円でいくらとして記録するのかという問題が残ります。ここには通達があります。所得税基本通達57の3-2(外貨建取引の円換算)です。
「法第57条の3第1項((外貨建取引の換算))の規定に基づく円換算(同条第2項の規定の適用を受ける場合の円換算を除く。)は、その取引を計上すべき日(……「取引日」……)における対顧客直物電信売相場……と対顧客直物電信買相場……の仲値……による。」
「ただし、不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務に係るこれらの所得の金額……の計算においては、継続適用を条件として、売上その他の収入又は資産については取引日の電信買相場、仕入その他の経費……又は負債については取引日の電信売相場によることができるものとする。」
整理すると、こうなります。
この通達は令和7年の改正を経ています。また、どのレートを、どの金融機関の公表値で、いつの時点のものを使うかという実務上の選択は、この記事で一律に示せるものではありません。ご自身の記録方法については、所轄の税務署または税理士にご確認ください。この記事は通達に何が書かれているかを示すところまでです。
今日やること
制度の話が続きましたが、今日手を動かせることは多くありません。
この記事で扱った100万円という数字は、結局のところあなたが動く基準ではありませんでした。動く基準は20万円のほうであり、しかもそれは受け取った額ではなく、経費を引いた後の所得で見ます。噂の形で伝わってくる数字は、たいてい大きいほうだけが残ります。小さいほうの数字のほうが、自分の作業に直結します。
記録さえ残っていれば、あとの判断は専門家に渡せます。逆に、記録が無い状態で2月を迎えると、判断そのものができません。今日できるのは、記録を残すところまでです。
よくある質問(FAQ)
【免責事項】本記事はKingfin日本語版編集部による情報提供・教育目的のコンテンツであり、税務相談ではありません。記載しているのは公表されている法令・通達・国税庁ページの一般的な整理であって、個々の納税者の申告義務の有無、所得区分、経費の範囲、外貨の換算方法を判定するものではありません。ご自身の個別の判断は、必ず所轄の税務署または税理士にご確認ください。引用した条文および記載は、執筆時点(2026年9月)に e-Gov法令検索(内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律および同法施行令)ならびに国税庁のページ(F4-1 国外送金等調書、No.2020、No.1900、No.1906、No.1500、法第57条の3《外貨建取引の換算》関係、CRSコーナー)で確認したものですが、法令・通達およびその運用は変更されます。CRSに関する記述は公表されている一般的な枠組みの説明であり、特定の個人の口座情報が実際に交換されることを述べるものではありません。また、Kingfinのアフィリエイトで紹介するOlympTradeはFX・バイナリーオプション関連のトレードサービスであり、日本国内で金融商品取引業の登録を受けた業者ではありません。トレードには元本を失うリスクが常に伴い、「必ず稼げる」「絶対に増える」といった保証はできません。アフィリエイトの成果・報酬額にも保証はなく、結果には個人差があります。